ワキガと多汗症の違いとは?においと汗の特徴、治療法を医師が解説
大阪市にある古林形成外科 難波心斎橋院です。当院では、日本形成外科学会認定の形成外科専門医が、患者さま一人ひとりの状態に合わせたワキガ治療を行っています。
「脇汗が多いから、ワキガかもしれない」「においと汗、どちらの治療を受ければいいの?」と迷う方は少なくありません。ワキガと多汗症は、どちらも脇の汗に関する悩みですが、原因も治療法も異なります。
この記事では、ワキガと多汗症の違い、それぞれの特徴、治療法の違いについて、専門医監修のもとわかりやすく解説します。
ワキガと多汗症の違いとは
ワキガ(腋臭症)と多汗症は、別の病気です。ワキガは脇から独特のにおいが出る状態、多汗症は日常生活に支障が出るほど汗の量が多い状態を指し、原因となる汗腺も異なります。
ワキガは「におい」、多汗症は「汗の量」の悩み
ワキガは、脇のアポクリン汗腺から出る汗が皮膚の常在菌に分解されることで、独特のにおいが生じる状態です。汗の量が多くなくても、においは出ます。生まれ持った体質によるもので、思春期にアポクリン汗腺の働きが活発になるころから気になり始めます。
多汗症は、体温調節に必要な量を超えて汗が出る状態です。脇だけに汗が多く出るものは原発性腋窩多汗症と呼ばれ、日本では約6%の人にみられると報告されています1)2)。汗そのものはほとんどにおわないため、多汗症の悩みは主に、服の汗じみや、汗が気になって着る服が限られるなど、汗の量に関するものです。
原因となる汗腺が違う
人の汗腺には、エクリン汗腺とアポクリン汗腺の2種類があります。
エクリン汗腺は全身にあり、体温を下げるための汗を出します。汗のほとんどは水分で、においはほとんどありません。多汗症は、このエクリン汗腺から汗が出すぎることで起こります。
アポクリン汗腺は、脇や耳の中、乳輪など限られた場所にあります。脂質やたんぱく質を含む汗を出し、これが菌に分解されるとにおいのもとになります。ワキガには、このアポクリン汗腺が関係しています。
ワキガと多汗症の違い(比較表)
| 項目 | ワキガ(腋臭症) | 多汗症(原発性腋窩多汗症) |
|---|---|---|
| 主な悩み | におい | 汗の量 |
| 原因の汗腺 | アポクリン汗腺 | エクリン汗腺 |
| 汗のにおい | 独特の強いにおいがある | 汗そのものはほとんどにおわない |
| 気になり始める時期 | 思春期以降 | 子どもから若い世代に始まることが多い |
| 体質との関係 | 家族にワキガの人がいることが多い | 家族にも多汗症の人がいることがある |
| 保険適用の主な治療 | 手術(剪除法) | 抗コリン薬の塗り薬、ボトックス注射(重度の場合) |
汗が多いとワキガになる?両者の関係
汗の量が多いだけでは、ワキガにはなりません。ただし、ワキガの方は汗が多いとにおいが広がりやすくなります。また、ワキガと多汗症の両方の症状がある方もいます。
多汗症からワキガになることはない
多汗症で増えているのは、エクリン汗腺から出る汗です。エクリン汗腺の汗はほとんどが水分で、においのもとになる成分はほとんど含まれません。そのため、汗の量が多くても、それだけでワキガのにおいが出ることはありません。
ワキガかどうかは、アポクリン汗腺の数や働きといった生まれ持った体質によって決まります。多汗症が続いた結果としてワキガになるということはありません。
汗が多いとにおいが広がりやすい
一方で、ワキガの方は、汗の量が多いとにおいを強く感じることがあります。アポクリン汗腺から出たにおいのもとが、エクリン汗腺から出る多量の汗とともに脇全体に広がり、衣類にも移りやすくなるためです。
また、脇が汗で湿った状態が続くと、皮膚の常在菌が増えやすくなります。そのため、ワキガではない方でも、汗をかいたまま時間がたつと汗臭さが出ることがあります。
ワキガと多汗症は併発することがある
ワキガと多汗症は別の病気のため、両方の症状がある方もいます。この場合は「においも汗の量も気になる」という状態になり、どちらの悩みが中心なのか、ご自身では判断しにくくなります。
両方の症状がある場合は、においと汗の量のそれぞれに合わせて治療を考えます。治療法の違いについては、後ほど詳しく解説します。
自分はどちら?それぞれの特徴の目安
ワキガと多汗症には、それぞれ目安となる特徴があります。ただし、ご自身だけで判断するのは難しく、最終的な判断は医師の診察で行います。
ワキガが疑われる特徴
次のような特徴がある場合は、ワキガの可能性があります。
- 耳垢が湿っている
- 家族にワキガの人がいる
- 白いシャツの脇が黄ばみやすい
- 汗をあまりかいていなくても、脇のにおいが気になる
なかでも耳垢のタイプは、ワキガと深く関係しています。耳垢が湿っているかどうかは遺伝子のタイプで決まり、ワキガの方の約99%が、耳垢が湿るタイプの遺伝子をもっていると報告されています3)。耳垢との関係は「耳垢が湿っているとワキガ?体質診断とにおいの改善法を解説!」、においの強さの目安は「ワキガのレベル診断」で詳しく解説しています。
多汗症が疑われる特徴
日本皮膚科学会のガイドラインでは、はっきりした原因がないまま汗が多い状態が6か月以上続き、次の6項目のうち2項目以上に当てはまる場合に、原発性局所多汗症と診断するとしています1)。
- 最初に症状が出たのが25歳以下
- 左右対称に汗が出る
- 眠っている間は汗が止まっている
- 週に1回以上、汗が多く出る
- 家族にも同じ症状の人がいる
- 汗のために日常生活に支障がある
重症度は、汗による日常生活への支障の程度で判定します。汗がほとんど我慢できず、日常生活にたびたび支障がある程度以上の場合は重症とされ、治療法の選び方にも関わります。
自分で判断が難しい理由
自分のにおいには鼻が慣れてしまうため、ワキガのにおいがあっても、本人は気づきにくいことがあります。反対に、においを気にするあまり、実際より強く感じてしまう方もいます。
また、汗臭さとワキガのにおいは区別がつきにくく、ワキガと多汗症の両方の症状がある場合は、どちらが悩みの中心なのかさらにわかりにくくなります。汗臭さとの違いは「ワキガと汗臭さの違いとは?」、ワキガではないのに脇が臭う原因は「ワキガじゃないのに脇が臭いのはなぜ?」で解説しています。
セルフチェックはあくまで目安で、診断の代わりにはなりません。診察では、医師がにおいや汗の状態を直接確かめたうえで判断します。
ワキガと多汗症の治療法の違い
ワキガはにおいのもとになるアポクリン汗腺、多汗症は汗の量に関わるエクリン汗腺に働きかける治療を行います。保険が使えるかどうかも、治療法によって異なります。
| 治療法 | 主な対象 | 保険 |
|---|---|---|
| 剪除法(皮弁法) | ワキガ | 使える |
| ミラドライ | ワキガ・多汗症 | 使えない(自由診療) |
| 抗コリン薬の塗り薬 | 多汗症 | 使える |
| ボトックス注射 | 多汗症 | 重度の場合は使える |
ワキガの治療
ワキガの治療では、においのもとであるアポクリン汗腺を取り除いたり、働きを止めたりします。
保険が使える代表的な治療は、剪除法(皮弁法)です。脇の中央の、しわがはっきりしている部分に沿って4cm程度切開し、皮膚の裏側にあるアポクリン汗腺を医師が目で確かめながら取り除きます。当院では、片脇ずつの手術を基本としています。詳しくは「剪除法(皮弁法)」をご覧ください。
切らない治療としては、ミラドライがあります。マイクロ波で汗腺を熱により破壊する治療で、アポクリン汗腺だけでなくエクリン汗腺にも働きかけます。詳しくは「ミラドライ」をご覧ください。
多汗症の治療
脇の多汗症では、症状の程度に応じて次のような治療を行います。
- 塩化アルミニウムの塗り薬:汗の出口をふさぎ、汗を抑えます。
- 抗コリン薬の塗り薬:汗を出す指令を抑える薬で、エクロックゲル(ソフピロニウム臭化物)とラピフォートワイプ(グリコピロニウムトシル酸塩)があります。保険が使えます。
- ボトックス注射:汗を出す神経の働きを抑えます。重度の場合は保険が使えます。効果の持続期間は数か月のため、繰り返し治療を受けます。
このほか、ミラドライも脇の汗を減らす治療として使われています(自由診療)。
ワキガと多汗症の両方がある場合
においと汗の量の両方が気になる場合は、どちらが悩みの中心かを見きわめたうえで、治療法を選びます。
たとえば、ミラドライはアポクリン汗腺とエクリン汗腺の両方に働きかけるため、においと汗の量の両方の改善が期待できます。
どの治療が合うかは、症状の程度やダウンタイムに関するご希望、費用などによって異なります。
何科を受診する?受診の目安
ワキガと多汗症は、どちらも形成外科や皮膚科で相談できます。ワキガで手術も含めて治療を考えたい場合は、形成外科が適しています。においと汗の量の両方が気になる場合は、両方の治療に対応している医療機関を選ぶと、相談しやすくなります。受診先の選び方は「ワキガは何科に行く?受診の目安と治療法を医師が解説」でも詳しく解説しています。
次のような症状がある場合は、医療機関への相談をおすすめします。
- 家族や周りの人から、においを指摘された
- 衣類の脇が黄ばみやすい
- 市販の制汗剤を使っても、においや汗の悩みが改善しない
- 脇汗が多い状態が6か月以上続いている
- においや汗のために、服選びや人付き合いなど日常生活に支障がある
においや汗の悩みは、人に相談しにくいものです。ひとりで悩まず、早めに医療機関を受診しましょう。
まとめ
ワキガと多汗症は、どちらも脇の汗に関する悩みですが、別の病気です。ワキガはアポクリン汗腺から出る汗によるにおい、多汗症はエクリン汗腺から出る汗の量が主な悩みです。
汗の量が多いだけではワキガにはなりません。ただし、ワキガの方は汗が多いとにおいが広がりやすく、ワキガと多汗症の両方の症状がある方もいます。
治療法も異なります。ワキガには保険適用の剪除法(皮弁法)など、多汗症には塗り薬やボトックス注射などがあります。ミラドライは、アポクリン汗腺とエクリン汗腺の両方に働きかける治療です(自由診療)。
ワキガなのか多汗症なのかは、セルフチェックだけでは判断が難しいものです。においや汗が気になるときは、医師の診察で確かめ、ご自身に合った治療を選びましょう。
ワキガ・ワキ汗の治療は古林形成外科 難波心斎橋院へ

大阪市の古林形成外科 難波心斎橋院では、日本形成外科学会認定の形成外科専門医が、ワキガやワキ汗の悩みに対して、一人ひとりの症状に合わせた治療を行っています。
「自分はワキガなのか、汗が多いだけなのか」「においと汗のどちらを治療すればよいのか」は、ご自身では判断が難しいものです。当院ではまず診察で、においの程度や汗の量、日常生活への影響を確認し、診断し、治療が必要かどうかを判断します。
においの治療には保険適用の剪除法、においとワキ汗の両方が気になる方にはミラドライなど、症状に合わせた治療に対応しています。ダウンタイムに関するご希望なども踏まえて、適した方法をご提案します。保険が使えるかどうかや費用についても、診察時にご説明します。
ワキ汗やワキガでお悩みの方は当院までご相談ください。
関連ページ
参考文献
1) 藤本智子, 横関博雄, 中里良彦, 他. 原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版. 日本皮膚科学会雑誌. 2023;133(2):157-188.
2) Fujimoto T, Kawahara K, Yokozeki H. Epidemiological study and considerations of primary focal hyperhidrosis in Japan: from questionnaire analysis. J Dermatol. 2013;40(11):886-890. https://doi.org/10.1111/1346-8138.12258
3) Nakano M, Miwa N, Hirano A, Yoshiura K, Niikawa N. A strong association of axillary osmidrosis with the wet earwax type determined by genotyping of the ABCC11 gene. BMC Genet. 2009;10:42. https://doi.org/10.1186/1471-2156-10-42

