剪除法(皮弁法)
ワキガの根治療法には、手術療法やミラドライがあげられます。
その中でも手術療法は、ワキガの根治を目指す上で代表的な治療法です。保険適用の手術には、剪徐法(せんじょほう)があります。
このページでは、剪除法についてご紹介します。
剪除法(皮弁法)とは
剪除法は皮弁法とも呼ばれ、ワキガ(腋臭症)の治療として、保険適用が認められた手術です。
手術方法としては、ワキの真ん中を切開し、そこからアポクリン汗腺を直接切除します。ワキガの原因となるアポクリン汗腺を、目視で確実に除去するため、ワキガの根治が可能です。
剪除法による治療は、外用薬やボトックス注射、ミラドライと比較して、最も高い治療効果が期待できます。
剪除法以外のワキガ手術
剪除法以外のワキガ手術には、特殊機器を用いて行う「皮下組織削除法」や「超音波吸引法」などがあります。皮下組織削除法は、ローラーと刃がついた特殊な機器を用いて汗腺を削り取る方法です。超音波吸引法は、小切開から超音波吸引機を用いて汗腺を破砕、吸引します。
どちらの治療法も保険適用を受けておらず、自費診療となります。当院では、手術は保険適応が認められた剪除法を、自費診療の場合は低侵襲で根治が可能なミラドライを推奨しています。
剪除法(皮弁法)による治療の流れ
手術デザイン
ワキ毛が生えている部分よりも、一回り大きい範囲をペンでマーキングします。その中心近くの、最もシワがはっきりしているところを切開線とします。
皮膚切開と皮膚剥離
局所麻酔後、切開線に沿って4cm程度切開します。
そして切開部から医療用のハサミを使ってワキの下の皮膚を剥離します。
アポクリン腺の除去
剥離した皮膚と筋膜の間の脂肪層を裏返すようにしてめくり、アポクリン汗腺をハサミで一つひとつ丁寧に切除します。
切除後、アポクリン汗腺がきれいに全て取れているかを確認します。
縫合固定
切開した部分を丁寧に縫合します。その際、皮膚の下に血が溜まらないようにドレーン(廃液管)を挿入します。また、剝がした皮膚の固定と圧迫止血のため、傷を面で圧迫するタイオーバー(ガーゼで包んだ綿を使用)を行います。
手術に要する時間は、皮膚の切開・剥離から、アポクリン腺の除去、止血、圧迫を含め、両側で約90分です。
剪除法(皮弁法)の効果
剪除法は、アポクリン汗腺を目視で確認しながら切除していくため、治療効果は他治療と比較して高いとされます。
海外の報告では、腋臭症患者様に剪除法の治療を行なった結果、95%以上の患者様で臭いの改善が認められ、高い効果が示されています 1-2)。
ただし剪除法は、執刀医の技術が効果や手術後の傷跡に大きく影響するとされます。その点は注意が必要です。
【参考文献】
1)Liu Q, Zhou Q, Song Y, et al. Surgical subcision as a cost-effective and minimally invasive treatment for axillary osmidrosis. J Cosmet Dermatol 9: 44-9, 2010
2)Qian JG, Wang XJ. Effectiveness and complications of subdermal excision of apocrine glands in 206 cases with axillary osmidrosis. J Plast Reconstr Aesthet Surg, 63: 1003-7, 2010
剪除法(皮弁法)の安全性
剪除法の手術後は、痛みや腫れ、内出血などが生じる場合があります。
ワキを切開して行う治療のため、手術による傷跡が残ります。傷跡は、手術後数ヶ月〜1年で目立たなくなります。切開の傷は十分落ち着くとシワに隠れ、ワキの下のスジやシワのような傷跡になります。
また、手術後は皮膚がしっかり定着するよう圧迫固定が必要になります。そのため、ダウンタイムが生じます。
ダウンタイムとは:日常生活に戻るまでの期間
当院の剪除法(皮弁法)の特徴
形成外科専門医による日帰り手術
当院では、日本形成外科学会認定の形成外科専門医が治療を担当します。
剪除法は、執刀医の技術が効果や手術後の傷跡に大きく影響するとされます。形成外科の専門医資格を有する医師が治療を担当することで、質の高い剪除法による治療をご提供します。
また、当院での剪除法は日帰り手術で行っています。
手術の痛みを軽減する様々な工夫
手術では局所麻酔を使用して痛みを軽減しています。
当院では、局所麻酔の注射時の痛みにも配慮し、痛みの軽減が期待できる極細の針を使用するほか、薬剤の配合にも工夫をしています。
痛みが苦手な方には個別の対応も可能です。痛みを軽減するための様々なご提案をいたしますので、お気軽にご相談ください。
きれいな仕上がりの縫合技術
形成外科は、手術による傷あとを目立ちにくく、綺麗に仕上げることを得意とする診療科です。
当院では、第一線で活躍してきた日本形成外科学会認定の形成外科専門医が、細やかな配慮をもって丁寧に手術を行います。診察時には、手術を行うにあたって詳しくご説明いたします。
負担の少ない日帰り手術とはいえ、手術に対して不安や疑問を抱かれることもあるかと思います。少しでも心配なことや気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
剪除法の治療費用
片ワキ手術費用(保険診療)
3割負担の場合
21,600円
1割負担の場合
7,200円
別途費用
診察料・処方料
1,000円程度
検査費用
1,000円程度
当院で行う剪除法の治療は、片ワキずつを基本としています。
両側のワキを同時に治療すると、血腫などの合併症のリスクが高まるほか、術後の圧迫固定が日常生活に支障をきたす恐れがあります。
そのため、初めに片ワキの治療を行い、その後の経過をふまえてもう一方のワキの治療を行います。
患者様からよくある質問
-
初診の日に手術(剪除法)を受けられますか?
当院では、初診での手術は行っておりません。初診の日は診察を行い、ワキガかどうかを診断します。ワキガと診断され、剪除法による治療を希望される場合は、手術内容を説明し、手術日を決定します。その後、手術日において、剪除法による治療を行います。
-
剪除法の手術は何歳から受けられますか?
剪除法では、ワキガの原因となるアポクリン汗腺を除去します。アポクリン汗腺は、性ホルモンの分泌が増える思春期に発達し、活性化します。アポクリン汗腺が未発達の状態で手術を行うと、術後にアポクリン汗腺が増加してワキガが再発する可能性があります。そのため、手術を受ける場合は高校生以上の年齢が望ましいといえます。
-
手術中に痛みはありますか?
手術の際は、事前に局所麻酔薬を注射し、手術時の痛みを防ぎます。そのため、手術中の痛みはほとんどありません。
-
手術後、ワキの毛は生えなくなりますか?
汗腺とワキの毛の毛根は近い層にあるため、剪除法では汗腺を除去する際に毛根も取り除かれます。そのため、手術後は腋の多くの毛が生えなくなります。(剪除法の脱毛効果には個人差があります)。
-
手術後はいつから仕事ができますか?
剪除法後は、圧迫固定と患部の安静が必要です。
軽いデスクワークなど、ワキを動かさない仕事であれば、ガーゼ交換を行う術後2〜3日後から再開が可能です。一方、ワキを動かす必要がある仕事の場合は、少なくとも1週間程度のお休みを取ることが推奨されます(術後1週間後に抜糸を行い、ガーゼが外れます)。さらに、頻繁に腕を上げてワキが動く仕事や運動については、術後2週間程度は控えていただくことが必要です。