ワキガの治療
ワキガの治療法は、症状を抑える目的で行なう治療「対症療法」と病気の原因を取り除いて治す「根治療法」とに分けられます。
対症療法には、外用薬やボトックス注射などがあげられます。一方で根治療法には、「剪除法(皮弁法)」や「ミラドライ」があげられます。
このページでは、それぞれの治療の特徴についてご紹介します。
外用薬
ワキガ治療で用いられる外用薬には、以下があります。
塩化アルミニウム製剤
エクロックゲル5%
ラピフォートワイプ2.5%
塩化アルミニウム製剤
塩化アルミニウム製剤は、ワキガの治療だけでなく、身体の各部位で起こる多汗症の治療薬として用いられます。塩化アルミニウム溶液を腋窩(わきの下)に塗布することで、塩化アルミニウムと汗の内容物が凝集し、塊を作ることで汗管を塞ぎ、発汗を抑制します。
効果が現れるまでには、2~3週間の一定の期間が必要とされます。また、対症療法の治療薬のため、症状の改善が認められた後も継続した塗布が必要です。
塩化アルミニウム製剤は保険適用されておらず、自費診療となります。
エクロックゲル5%
エクロックゲル5%(一般名:ソフピロニウム臭化物ゲル)は、原発性腋窩多汗症(※)の患者様を対象に保険適応された外用薬です。1日1回、適量を腋窩に塗布することで発汗を抑え、汗による悩み(汗の量や臭い)を改善します。
原発性腋窩多汗症の原因となるエクリン汗腺からの汗の分泌は、神経伝達物質であるアセチルコリンがエクリン汗腺のムスカリン受容体サブタイプ3(M3)を刺激することにより発生するとされます。エクロックゲルは、アセチルコリンがM3受容体を刺激するのをブロックし、発汗を抑制します。
個人差はありますが、効果は徐々に現れ、症状の改善を感じるまでには一定の期間が必要とされます。また、対症療法の治療薬のため、症状の改善が認められた後も継続した塗布が必要です。
※原発性腋窩多汗症:多汗症の中でも、腋窩からの汗の量が通常よりも多い状態
ラピフォートワイプ2.5%
ラピフォートワイプ2.5%(一般名:グリコピロニウムトシル酸塩水和物ワイプ)は、原発性腋窩多汗症の患者様を対象に保険適応された外用薬です。1日1回、薬液が含まれた不織布1枚を腋窩に塗布することで発汗を抑え、汗による悩みを改善します。
原発性腋窩多汗症の原因となるエクリン汗腺からの汗の分泌は、神経伝達物質であるアセチルコリンがエクリン汗腺のムスカリン受容体サブタイプ3(M3)を刺激することにより発生するとされます。
ラピフォートワイプは、エクロックゲルと同様にアセチルコリンがM3受容体を刺激するのをブロックし、発汗を抑制します。
個人差はありますが、効果は徐々に現れ、症状の改善を感じるまでには一定の期間が必要とされます。また、対症療法の治療薬のため、症状の改善が認められた後も継続した塗布が必要です。
ボトックス注射
ボトックス(一般名:A型ボツリヌス毒素製剤)は、重度の原発性腋窩多汗症の患者様を対象に保険適応された薬剤です。
ボトックスの主成分であるA型ボツリヌス毒素は、神経の末端に作用し、アセチルコリンの放出を阻害します。その結果、発汗を抑え、汗による悩みを改善します。
ボトックスの発汗抑制効果は、投与から数日で現れ、投与後4ヶ月~6ヵ月にわたって持続します(効果には、個人差があります)。発汗抑制効果を維持するためには、4ヵ月以上の間隔で反復投与が必要となります。
重度の原発性腋窩多汗症について
重度の原発性腋窩多汗症と診断されるには、原発性局所多汗症の診断基準を満たし、重症の多汗症と判定される必要があります。
原発性局所多汗症の診断基準
以下の6症状のうち、2項目以上の症状があてはまる
対称性に多汗がみられること
多汗によって日常生活に支障が生じていること
週1回以上の頻度で多汗エピソードがみられること
最初の症状が出たのが、25歳以下であること
家族歴がみられること
睡眠時は発汗が止まっていること
原発性局所多汗症の重症度判定(Hyperhidrosis Diseaseb Severity Scale/HDSS)
以下の3または4にあてはまること
1.発汗は全く気にならず、日常生活に支障がない
2.発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある
3.発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある
4.発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある
剪除法(皮弁法)
剪除法は皮弁法とも呼ばれ、ワキガ(腋臭症)の治療として、保険適用が認められた手術です。
手術方法としては、腋の真ん中を切開し、そこからアポクリン汗腺を直接切除します。ワキガの原因となるアポクリン汗腺を、目視で確実に除去するため、ワキガの根治が可能です。
剪除法による治療は、ワキガ治療の中でも高い治療効果が期待できます。
ミラドライ
ミラドライは、原発性腋窩多汗症に対する治療機器として、国内で薬事承認を取得しています。米国では、腋窩多汗症や腋臭症、腋毛の減毛で承認を取得しています。
ミラドライは、マイクロ波を用いて汗腺を熱により破壊し、発汗を抑制します。破壊された汗腺は活動を停止し、その機能は再生しないため、効果は半永久的とされます。また、手術による傷跡が残らないため、低侵襲な治療とも言えます。
ミラドライは保険適用されておらず、自費診療となります。