ワキガについて
ワキガは、医学的には「腋臭症(えきしゅうしょう)」と呼ばれます。
日本人におけるワキガの比率は約1割とされており、この比率は欧米人と比較して低くなっています。しかし、日本人は臭いに対する意識が強い傾向にあり、ワキガはコンプレックスに繋がりやすく、日常生活に支障が生じる場合があります。
このページでは、ワキガの原因、診断や治療法などについてご紹介します。
汗腺について
◼️皮膚の断面図と汗腺の種類
汗を分泌する汗腺には、エクリン汗腺とアポクリン汗腺の2種類があります。
エクリン汗腺は、全身の皮膚に分布しており、アポクリン汗腺は、ワキ、乳首、陰部、外耳道に分布しています。
エクリン汗腺は皮膚表面に直接開口しており、分泌される汗の成分のほとんどが水分でサラサラとしています。
一方で、アポクリン汗腺は毛包内に開口しており、分泌される汗の成分は水分の他にタンパク質や脂質、脂肪酸などを含みます。
※外耳道:耳の入り口から耳の奥の鼓膜までの通り道
ワキガの原因
◼️ワキガ臭発生の原因
※アポクリン汗腺からの分泌汗が、皮膚に常在する
細菌に分解されることによりワキガ臭が発生
ワキガの原因には、主にアポクリン汗腺から分泌される汗や皮脂が皮膚の常在菌によって分解されることが挙げられます。
アポクリン汗腺から分泌される汗自体は無臭ですが、ワキの下の皮膚常在菌と混ざり合うことで、低級脂肪酸や揮発性硫黄化合物など臭いのある物質へ分解され、特有の臭いが発生します。
ワキガの特有な臭いは、硫黄臭、スパイシー臭、雑巾様臭といった表現がされます。
硫黄臭:温泉のような臭い
スパイシー臭:香辛料のようなスパイシーな臭い
雑巾様臭:生乾きした洗濯に発生する雑巾のような臭い
ワキガ(腋臭症)について
ワキガは、医学的には「腋臭症(えきしゅうしょう)」と呼ばれます。
ワキガ(腋臭症)の発症年齢は、アポクリン汗腺が発達する思春期以降で発症し、20代でピークを迎えます。性別においては、アポクリン汗腺が多い男性の方が重症度が高いとされます。
日本人におけるワキガの比率は約1割とされており、この比率は欧米人と比較して低くなっています。しかし、日本人は臭いに対する意識が強い傾向にあり、ワキの臭いが生理的なものとみなされる欧米と比較して、コンプレックスに繋がりやすく、日常生活に支障が生じる場合があります。
ワキガの原因となるアポクリン汗腺は、ワキの他に外耳道にも分布しているため、ワキガの患者様は耳垢が湿っている傾向にあります。また、ワキガは常染色体優性遺伝であり、親がワキガの場合、子どもに遺伝する確率が高まります。
腋窩多汗症について
ワキガの患者様は、緊張やストレスにより、ワキに過剰な発汗が生じる腋窩多汗症を伴う場合が多くなっています。
腋窩多汗症は、左右対称にワキの下から過剰な汗が出てしまう状態を指し、精神的な緊張やストレスなどにより症状が現れることが多いです。
衣服のワキに汗染みができることで整容面からの問題が生じ、ワキガ同様に日常生活に支障が生じる場合があります。
ワキガの診断
ワキガの診断は、主に問診と臭いの重症度を評価する検査を用いて行われます。
問診では、ワキガの発症年齢、耳垢の性状、家族歴などを伺い、総合的に判断します。
臭いの検査では、主にガーゼテストが用いられます。ガーゼテストでは、ワキの下にガーゼを挟み、医療従事者の嗅覚でガーゼの臭いを客観的に判定します。
ステージ
判定基準
ステージⅠ
臭わない
ステージⅡ
ガーゼがわずかに臭う
ステージⅢ
鼻にガーゼを近づけると臭う(軽度)
ステージⅣ
ガーゼを近づけなくても臭う(中度)
※横にいてわかる程度
ステージⅴ
ガーゼを手に持っただけで臭う(重度ワキガ)
※人を間に挟んでいてもわかる程度
ワキガの治療
ワキガの治療法
ワキガの治療法は、病気の原因を取り除いて治す「根治療法」と症状を抑える目的で行なう治療「対症療法」に分けられます。
根治療法には、手術によりアポクリン汗腺を直接取り除く「剪除法(皮弁法)」、マイクロ波によりアポクリン汗腺を焼灼・凝固する「ミラドライ」が挙げられます。
一方で対症療法としては、エクロックゲル5%(一般名:ソフピロニウム臭化物ゲル)やラピフォートワイプ2.5%(一般名:グリコピロニウムトシル酸塩水和物液)などの外用薬、ボツリヌス毒素を注射する「ボトックス注射」などが挙げられます。
治療目的 | 治療法 | 医薬品名/手術法/医療機器 | 保険適用 |
---|---|---|---|
対症療法 | 外用薬 | 塩化アルミニウム製剤 | なし |
エクロックゲル5%※ソフピロニウム臭化物ゲル | あり | ||
ラピフォートワイプ2.5%※グリコピロニウムトシル酸塩水和物液 | あり | ||
注射 | A型ボツリヌス毒素製剤(ボトックス注射) ※A型ボツリヌス毒素 | あり重度の原発性腋窩多汗症 | |
根治療法 | 手術療法 | 剪除法(皮弁法) | あり |
マイクロ波メス | ミラドライ | なし |
※一般名
ワキガの治療選択
治療においては、重症度をふまえて治療選択が行われます。
ワキガの重症度評価においてステージⅠの場合は、ワキガでないにも関わらず、自覚症状を感じており、自己臭恐怖症が疑われます。そのため、精神安定剤など自己臭恐怖症に対する治療が行われます。
ステージⅡについては、生活習慣の改善により効果が得られる場合があります。また、制汗剤の使用などの保存的治療も考慮します。
ステージⅢ以降については、患者様の生活習慣や年齢などの背景をふまえて、手術療法やミラドライを含めた適切な治療を選択します。